泣き場

 免許を取った頃から泣きたい事があると、必ず行く場所がある。夜になると人通りが全く無く、車を路駐して、鬱蒼とした木々の森を歩きながら、物思いに耽る。自然に流れる涙と、渦巻く感情が私を包み込み、ベンチに座って一服した頃には気分がすっかり普通に戻る。
 その場所は、最近都市開発の波にやられて、あんなに鬱蒼としてた森も今は林位になったし、昔は遠くにネオンと観覧車の灯りが見える位だったのに、マンションが出来たりコンビニが出来たりで、すっかり明るい。家からほんの15分の場所にあったそこは、都会の隙間のオアシスだった。夏にはカブトムシが木にへばりついていたりして、都内と思えない場所だった。
 今日はウフムフの帰り、そこら辺を通りかかった時、空に2本の虹が架かっていた。あまりに綺麗でぼんやりと見つめてしまう。写真を撮らなきゃって思ったけれども、これは“今”“此処で”“見るのがベスト”だろうと、写真を撮らなかった。2本の虹は、約束という意味があるそうだ。約束……約束…ねぇ…。
 感情がなんだか不安定なのは低気圧の所為だと、分かって居ても、この感情の不安定さが起こす気持ち悪いような身体の感触は、未だに好きじゃ無い。むず痒いような…不思議なこの感覚は……何時止まるんだろう。