夜中におかんが「明日、大江戸温泉に行くから」と、連絡をしてくる。どうやら割引券を貰った模様。それから、おかんがずっと憧れている砂風呂が体験出来るそうで、行きたいと。だから、行ってきた。
 浴衣を選ぶ所で、ひとりの奥様が苦情を言っている。それは浴衣が短すぎる事と、帯紐が嫌な事。「こちらは身長でお選びしたサイズをお渡ししております」笑顔で対応する店員。奥様は「あたし、165あるのよ」自分より大きい奥様は、いざ着替えた時に気付いたようで、着ている浴衣はちょっと短い。「Lをくれない?」「いえ、こちらは身長で選んでおりますので」おい、マニュアル対応かよ。交換してやれよ。「あたしがそれを着るから、こちらの方にLを貸してあげてよ!」おかんが助け船に入る。「いえ、こちらは身長で…」おい、もうマニュアル捨てろ。呆れた奥様は、もういいとそのまま更衣室に戻っていく。ちなみに、この人の浴衣の選び方は大雑把。奥様より小さい自分は、Lを貰いました。浴衣は着たくないんだけど(こういう場所のは嫌い)、館内は私服で歩けないと言うから渋々借りたんだけれども、すんごくはだけたし、でっかくて困ったよ。
 砂風呂を予約して30分あったので足湯に入ったが、あちこちに敷き詰めてある石に痛くなる。そこは胃ですね、悪いの知ってます。痛い、痛いとのたまっていたら、知らない奥さんが「いったくて、歩けないわよね!」ええ、あちこち悪かったら激痛に耐えられません、きっと。足だけ浸かるというものは寒いので、女湯に移動する。前のカップルが迷子になっていて、カップルで女湯の入り口に来て「あっ!」迷路に近いなぁ、ここ。
 道具を全て母親が用意すると思っていたら、何も持ってこなかったら、おかんも大きいし立派だからなんでもあると思っていたら、なんでも無い。あっても無料じゃ無い。あかすりも有料で100円。それもなんだかお地蔵様を洗うやつみたいなので、欲しくも無い。近所の弱小健康ランドもあかすりは無料なので、無料で欲しいものだ。
 おかんが鞄をトイレに忘れてきてしまい、呼び出しを食らう。呼び出しを食らったついでに砂湯に移動する。ふたりきりだったのだが、プレイみたい。大人数が砂をかけて、一気に大人数は出ていく。先程熱かったりぬるかったら言ってくださいねって言われたけれども、叫ぶのかしら。少し恥ずかしいな。俺のライトが肉屋の唐揚げよろしく俺に向かってるのは、気のせいじゃ無いよ、いくらジューシーたって困るよ。そして大人数は、度々こっそり引き戸を少し開けてうちらを見ているのが眼鏡をかけていなくても音で分かる。おかん、笑いすぎて腹筋を痛くする。ふたりとも笑いすぎて、涙を流す。いやな親子だ。「ひー、苦しい!もうやめて!」まさにプレイ。
 お風呂に入ってみる。頑張って雑菌しているんだね。素晴らしい環境状態!すんごい臭いよ(爆死)。ウェラの脱色剤と同じ匂いのお風呂に浸かるのもプレイ。しかもぬるくて、辛い。どのお風呂もぬるい。もう嫌になる。サウナもぬるい。狭くてぬるい。ミストサウナが久しぶりにあったので入ってみると、テラ寒い。外より寒い。
 どうでもよくなったのでお風呂から逃げる。喫煙所に行くとこれまた狭くて、後から来て隣りに座った人に「すいません!狭いですよね」と、出して貰う始末。色んな食べ物の匂いが入り混ざって、カオスを起こしている。室内なのにあっちこっち寒くて湯冷めの危険を感じる。高血圧とある一定の年齢を超えた方は、危険な感じのする場所だ。よかった、普通で。
 自分では2度と行きたくない。それが自分の感想。マニュアル重視の対応も、ぬるすぎて臭すぎるお風呂も嫌だし、風呂場も段差やなにやらがありすぎて眼鏡無しでは生きられない自分には辛かった。入り組んだ作りも若い人には楽しいだろうけれども、うちのおかんでさえ迷子になりそうだった。
 家に帰り、相方と題名のない音楽会のハイビジョンを見る。最近、一生懸命視聴率を稼ごうとしているので見なかったのだが、懐かしい内容だった。自分が小さい頃、家にはテレビが1台しか無く、部屋も2つしか無かった。そうなると日曜日に、ヒーローものを自分と兄貴が見て、それからクラシック好きなおとんが題名のない音楽会を見るのだが、その頃は凄く面白かった。今日の内容はその頃のようで面白かった。クイズは難しすぎたが。
 あー、本物の温泉に行きたい。国営放送の大正琴の講座にはなんで声の変な人ばかり出てるんだろう。