新しい病院に行った。以前通っていた病院のバカにしたような電話対応やら医者の医者と思えぬ言動などにかなりやられてしまって、病院を探したのだ。長くこの病院に通っていて、一時だけいい状態があっただけで、ほぼ変わりの無い日々。薬漬けと言われてしまう程処方されていた薬。俺は薬の種類が多い程ステータスに感じる人間では無いので、そんなのも嫌だった。早くどうにかなりたい。早く普通になりたい。毎日演じて過ごす自分は、もう嫌だ。素直になって毎日過ごしたい。それで病院を見つけたのだ。
 病院の名前が変だなと思ったら、歯医者と一緒にやっている。ちょっと不思議な感じ。医者に話していて、色々な話を聞く。蜂蜜は糖分の吸収が早いから頭痛を起こすという話を聞いたりした。そういう事があったからか、俺はこれから2週間、大好きな甘いものを一切摂れなくなってしまった。炭酸飲料も飲んではいけないと言われ、途方に暮れる。俺は甘いものを食べて、病気が悪化した事は無い。調子はすこぶるいい。だけれども仕方が無い。何か代替えの品を見つけなければ。
 先生に何処が悪いのか聞かれて、ふと思う。俺はもしかしたら悪い所なんか無いんじゃないかと。今の所、悪すぎる箇所は2つ位しか思い浮かばない。その1つはもしかしたら人に言わせたら、なんて事の無い事かも知れない。もう1つもどうだっていい事かも知れない。そう考えると、今の自分が全く分からなくなった。必要の無い治療をひとり勝手に必要と思いこんでいるだけかも知れない。どうしたらいいかまた分からなくなった。
 考えてみる。俺は普通なんじゃないか。だから前に通っていた病院が、俺は病気じゃないから来られても迷惑だと感じて、冷たくあしらうようになったのかも知れない。
 でも。目の前が見えない。夢とか希望とか、ずっと無い。それがあったのは未だ自分が1桁だった頃だけだった。その夢だって、俺の夢じゃ無かった気がする。いやに現実的すぎる夢だったのを覚えている。そのまま……今になったんだな。
 だけれども、それも当たり前の事なのかも知れない。学歴が無かったり、色々無いから、夢が無いのかも知れない。みんな真面目に毎日を過ごしているから、夢があると思う。俺は真面目に過ごした事が無いし、送れる自信も無いから、夢が無い。
 唯一ある夢は、なるべく早く自然に死ぬ事。俺のささやかな願い。自然に死ぬというのは案外難しくて、自殺とかでは無いから自分で手を下す事も出来ず、ただただ運命に従うだけである。だから、それはなかなか来ない。
 ああしたい!こうしたい!思う日もある。けれども、俺は知っている。俺は出来ない。出来ても、その次が直ぐに浮かばない。浮かぶまでにかなりの時間を要してしまう、
 ああ、どうしよう、どうしよう。毎日そう思いながら生きている。地震や台風が好きなのも、天災で死ぬかも知れないという希望があるからだ。だから台風のシーズンに海に行く。時々、海に入ったりもする。それは俺の大好きな行動だ。海の藻屑になって死ぬのもいいかも知れない。海は全ての生命が産まれた場所だ。素敵な場所で死ねるというのは、とても素敵な事の気がする。
 だからって直ぐに死なないのが俺のいい処だ。俺の生命はかなり図太いので、普通の寿命までこの繰り返しなのかも知れないと思うと、少し悲しい。
 2週間後、また病院に行く。その時に聞いてみよう。病気じゃないのかも知れないという気がする事を話してみよう。それから遠くに旅に出よう。してみたいのは、お遍路さんと恐山に登る事。でも今は余裕が無いから、近くの霊山に行って、自分を見つめ直してみたいと思う。